コープのあるまちで vol.2/明石海峡大橋

僕らの海をもう一度
「宝の海」にしたいから

原 和也さん

兵庫県漁業協同組合連合会 広報担当。漁業に興味を持ってもらうため、干しだこ作りなどイベント企画にも奔走中。

昔、瀬戸内海の海沿いでは、イカナゴ漁が解禁になると「イカナゴのくぎ煮」を炊くにおいがあちこちの家庭から漂っていたものです。しかし、最近はくぎ煮を炊く家庭が減っています。その原因の一つは、イカナゴの漁獲量が減ってきていること。兵庫県で10年前に1万t以上獲れていたイカナゴが、漁期を短縮し親魚を残す努力を漁業者が行っても昨年は約147t。くぎ煮を炊きたくても手に入らないんですよ。イカナゴだけでなく、瀬戸内海域で漁獲量が減っているのは、海の“貧栄養化”が問題だとわかってきました。

1960年代から1970年代の高度経済成長期、生活排水や産業排水の増加によって水質汚染が進みました。きれいな海を取り戻すためのさまざまな施策によって、1990年代には水質が大きく改善。ところが2001年から、海の生態系を支える窒素やリンといった“栄養塩類”も規制対象に加えた結果、海に流れ込む栄養分が減ってしまったのです。それは、魚の餌になるプランクトンが減るということ。きれいになった海の中では、実は危機的な問題が起こっていたんです。イカナゴの漁獲量に影響が出ただけでなく、国内で2位の生産量を誇る兵庫県の養殖ノリでは、生育不良や色落ちなど、さまざまな問題が起こってきました。きれいな海ではあっても豊かな海ではないのです。

「もぐり船」と呼ばれる漁船が網の下に
潜り込み、ノリを収穫する様子

山や森から流れ出す栄養分を含んだ水や、人々のくらしの中で排出される水から、海の生物にとって大切な栄養分が供給され続けることでも海は豊かになります。コープこうべの組合員さんと一緒に取り組んでいる「虹の仲間で海づくり」もその取り組みの一環です。荒れた山や森を整備することで、海の豊かさも保たれるのです。
「地元のおいしい魚を食べてほしい」と漁業者は漁に出ています。これからも組合員の皆さんと一緒にイカナゴのくぎ煮の味を途絶えさせないよう、「宝の海」を取り戻したいですよね。

取材を終えて

漁連の建物の屋上から見た海はまぶしくてきれい。けれど、海の中には危機が迫っているとのこと。海を守ってくれる漁師さんを応援したいですね。

(組合員ライター 和田晃子)

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